三連休。 ---------------------------------- 三連休一日目。 この時期に三連休できるなんて、もうそれだけで奇跡のようなんだが。 あいつはいない。せっかくフルで休みの三連休なのに。 メールはもとより電話すら通じないような外国に行っちまってる。くそったれ。 ノートパソコンを立ち上げて、サイトを回る。 サッカー関係ばっかり。 あいつの評価を読む。 酷評で有名な某氏のコラムで、ヤツが褒められてた。ブックマーク。 あいつには見せないけどな。 腹が減ったのでメシを作る。 和食だ。 俺はそもそも和食党だ。 渋沢と外でメシを食うときは必ずといっていいほど和食の店だった。 あいつが好きな洋食なんてフレンチやイタリアンならいざ知らず、お子様メニューばっかりで俺の口には合わないもんばっかりだ。 なのに冷蔵庫にはミンチ肉が常備されている。アホらしい。素に返るとそう思う。 ハンバーグハンバーグって、はくしょん大魔王かオマエは。 って突っ込んだら、あろうことかヤツははくしょん大魔王を知らなかった。 信じられない。懐かしのアニメ特集の類はヤツの定番っぽいのに。けど、あいつはゲームはするが、そういえば、あまりテレビは見ないんだった。世情に疎いエースストライカー。 夕方に買い物に出る。 日常品を買い込む。 歯ブラシが安かったので色違いのを二本買った。アホらしい。また思う。 夜は資格試験の勉強をする。 テキストを開いて、けれど、集中できずにすぐに閉じた。静か過ぎると集中できないなんてどういうこった。 仕方ないのでテレビをつける。チャンネルをニュースに合わせる。 ちょうどスポーツコーナーだった。少しの期待。 ……ニュースは野球チームのキャンプ情報を伝えただけで終わった。 本当にいつになったらこの国のマスコミの野球至上主義は改善されるんだ。 憤ってみる。 だいたいメールも電話も繋がらないような国に遠征に出かけたりするヤツらも悪い。 ああ、それにしても電話も繋がらないなんて、イマドキそんなところあるのか。おかしいよな。……。 と、不意に携帯が揺れる。 飛びついた。 確認もせずに出たら、近藤だった。 明日の約束をする。 武蔵森サッカー部の同窓会、というか単にいつものメンバーでつるむ飲み会だ。 もちろん、渋沢は抜きだ。しょーがない。ヤツだってあいつと同じようにメールも電話も(以下略) 三連休二日目。 飲み会じゃなくて合コンだった。 いや〜、ホントのこと言ったらオマエこないじゃん? まあまあ、たまには彼女のこと忘れてパーッと。 パーッと、ね。 今や『ただのヒト』集団は、過去の栄光と、現・代表サマとのツテを武器にする。 女のコたちはまんざらでもなさそう。 武蔵森は相応に有名な進学校だ。卒業生はそれなりの道に進んでいる。たまに脇道にそれてるヤツもいるけどな。 信じられないくらいモテた。 が、俺はゼンゼン上の空だった。 帰ってニュースステーション見る、って言ったら「今日は土曜日でしょ」と突っ込まれた。 じゃあ、サタデースポーツがあるじゃないか。 なんでビデオ録画してこなかったんだろう。 急いで帰ってテレビをつけた。 また宮崎キャンプだった。 このままでは俺はアンチ巨人になってしまいそうだ。なんとかしてくれ。 三連休三日目。 何もない。 ネットばっか、してた。不毛だ。 くまなくニュース系のサイトを回ったが、テキストによるわずかな情報をかき集められただけだった。 とにかく明日には帰国するらしい。 テレビのニュースでは結局一度も取り上げられなかった。 テレビ局に抗議のメールを送りそうになって踏みとどまった。いずれにせよ不毛だ。 こんなことなら会社行ってればよかった、なんて思う俺は立派な仕事依存症なのかもしれない。 もうひとつの依存症については触れないでおく。 すごくイヤな考えが浮かんだ。 本当に吐き気がする。 俺をこんな気持ちにさせるあいつを心から呪った。 ベッドからずるずる滑り落ちる。 上半身だけ床に落として脚をベッドに上げたまま、ヘンな姿勢で天井を見上げた。 早く声聞かせろ、バカ代。 「なにやってんの、そんなカッコで」 「―――」 「えっへっへ〜、驚いた?驚いた?成田から直接こっち来ちゃった。日程変わってね、最終で間に合いそうだったから、 先輩? やっぱ、ブラウン管なんかじゃダメだ。 ニュースなんてやらないの正解。 俺の不毛な三日間を、あいつは笑顔でナシにした。 |
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